煩いと患い 2

救急車の手配が済んで、その後に母方のおばあちゃんの方に電話をかけた。

「おばあちゃん、あの、、あのさぁ、、お父さんが、首、、首吊って死んだ、、。首吊って死んだよぉ、、、。」

ぽろぽろ涙が出た。悲しいとか寂しいとかそんなんじゃなくて多分動揺からくる涙だった。

5〜10分して救急隊員が5人くらい来て横に倒したお父さんの容態を診た。

救急隊員が来るまで、お母さんは心臓マッサージとかしてたけど、途中で辞めた。

人は、人が生き返るか生き返らないか、

なんとなくわかる。

その後にお母さんはお父さんと手を繋いだ。

「まだあったかい、、まだあったかいのに、、、」と繰り返した。

お父さんがネクタイで首を吊ってたのをハサミでちぎって、横に倒した後、布団の横に封筒があるのを開けた。

500万くらい入ってた。

お母さんは「こんなもので、、」

って言った。私は終始無言だった。何も言えなかった。でもずっとずっといろんなことを考えていた。

封筒の中には遺書とお金が入ってて、かなりの額だったのは間違いない。

お父さんの死体を見たとき、封筒の中身を見たとき。ショックを受けたのは間違いないが死んだことに対する悲しみや寂しさを感じたわけじゃない。

人が1人死んで、こんな紙切れになるなんて信じたくなかったし、私はこんな紙切れで終わりたくないと思った。

 

私が何かしたのか。なんでこんな想いをしないといけないのか。好きでこんなに頑張ってきたわけじゃない。

好きでしんどい思いを背負ってきたわけじゃない。なんでこんな仕打ちをうけるのか。

好きでこんな人生にしてきたわけじゃない。

なんでだ。どこで間違えた。どうしたら良かった。あのとき何を喋れば良かった?

ぐるぐるぐるぐる

いろんなことを考えた。

 

1番突出してきた思いは

「私はこんな風に終わりたくない」

だった。

人が死ぬ。ましてや自分のお父さんが死ぬ、死んだその瞬間までも私は私の気持ちしか考えられない。お父さんと最後に喋った言葉も思い出せない。

親不孝をしてきたわけじゃない。むしろ孝行してきた。成績と習い事。全部一生懸命頑張ってきた。

けど、何も分かってなかった。

お父さんの会社がすでに潰れていたこと。

誰もいない家で1人で見ていたテレビ。

夜中に書いた遺書。涙が落ちたところが滲んでた。全然喋ってなかった。何も知らなかった。何も知ろうとしなかった。

新体操が終わって、夜に来るお迎えがいつもより早くなってたこと。

全然。何も。

 

なんだか、失格だと思った。何に対してかは今も分からないけれど。